共同研究
東アジア経済圏の発展と中小企業の役割―ベトナムを事例に―
研究者一覧
研究者 |
所属大学 |
代表者 |
近藤 義晴 教授 |
神戸市外国語大学 |
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上田 義朗 教授 |
流通科学大学 情報学部 |
研究発表テーマ
東アジア経済圏の発展と中小企業の役割―ベトナムを事例として―
研究概要
- 東アジア圏の経済発展は目を見張るものがある。特にベトナムは、日本企業にとって中国投資への偏重に伴うリスクの増大を背景に、中国との距離的近接性も配慮した投資が増大している。他面昨年来の世界的金融危機を背景に、ベトナムにおいて一定程度成長が落ち込んでおり、中小企業の厳しい状況もうかがわれる。
- ベトナム自身も経済発展の引き金として、海外からの直接投資を促進する政策を採用し、工業団地の建設を図り、企業誘致を積極的に展開している。同時に国内中小企業振興策を市場経済の活性化の一環として推し進めている。
- 日本の中小企業のベトナム進出も大幅に増加している。この場合、単に労働コストの相対的低さのみならず、むしろその労働力の質の高さ(勤勉性)や友好的受け入れ感情を重要な要因として進出し、日本国内への輸入のみならず第三国への輸出の基地として活用しようとしている。もちろん進出大企業の需要に応える役割も果たしている。日本中小企業のベトナム進出に際しては、各工業団地の立地やサービス内容の差異を十分調査して進出先を選択する必要がある。同時に、ベトナム企業との取引および協力関係について、個別企業の実情を十分観察する必要がある。この場合に、すでに進出している企業および在越日本コンサルタント機関を利用するとともに、ベトナム人との人的関係の構築にも意を払うことが重要である。
- 特に両国の中小企業の相互協力という観点から、今後の課題を以下のように挙げることができる。ⅰ)労働力の質が高いとはいえ、技能面の一層の能力向上、および製造過程並びに経営過程の合理的運営能力の向上が、ベトナム中小企業および在越日本中小企業にとって競争力強化の重要なカギである。国内向けであれ国外向けであれ、コスト意識の向上抜きにして質の高いしかも相対的に安い製品の競争力を確保することは難しい。ⅱ)この労働能力の向上・育成にとって、ベトナム人労働者のベトナムでの研修・教育とともに、日本での研修、すなわち人的交流が重要な方法と考えられる。経済団体を典型とする種々の組織による一般的な研修のみならず、個別企業レベルでの具体的な研修がより有効な方法となろう。総じて経営能力の強化が、ベトナム中小企業であれ在越中小企業であれ在立・発展にとって課題となる。(2008年7月19日の共同研究発表会において発表済)