研究者 | 所属大学 | |
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代表者 | 岡本 久之 教授 | 兵庫県立大学 経営学部 |
江川 育志 教授 | 兵庫県立大学 経営学部 | |
田中 一芳 教授 | 流通科学大学 |
標準化・モジュール化と国際市場‐ユニクロ化の経営・経済学‐
経済のグローバル化の中で、多くの日本企業が生産方法の再検討を行い、国際的な分業―特に生産工程の細分化やモジュール化を伴う国際分業―を推進して来ている。現在、こうしたことを利用して中国を中心とする東アジア各国に進出している日本の企業は、家電・自動車・電子機器・繊維などを中心に相当数に上っている。本研究は、現実のこうした動きを上手く説明する事ができる経済モデルを構築すること、およびそれを基に経済厚生について論じることを最終的な目的にしている。
こうした日本企業の動向は、「経済のグローバル化」と「生産工程の細分化」をキーワードに、捕らえることが可能である。経済のグローバル化の進展は、国際間の財・サービスの輸送コストを著しく引き下げた。それと同時に、これは生産技術の発達とも密接に関連するのだが、生産や商業活動にとってなくてはならない「情報の伝達」を容易にし、かつそのコストを著しく引き下げた。こうしたコストは、この分野で先導的な役割を果たしているRonald Jonesはサービスリンク・コストと呼んでいるが、それがグローバル化によって著しく低下した。
他方、生産技術の発達は、従来ならば一箇所ないし一地域で集積して行うことを余儀なくされる生産工程を、分割可能なものにした。これは、部品・半製品の標準化・モジュール化が進んだ事によるものと考えられるが、財の「生産工程」に地域的な「比較優位構造」をもたらすこととなった。その背景には、先に上げた輸送コストを初めとする、主に生産活動にまつわるサービスリンク・コストが著しく低下したことがある。
こうした変化の結果として現状(ユニクロ化現象)を捉えるならば、従来の理論ではあまり上手く説明できなかった日本や欧米先進国の企業、韓国・台湾を初めとする中進国の企業の外国への進出(海外直接投資や海外企業との業務提携)を説明することが可能である。と同時に、以上の点を考慮してキチンとしたモデルを構造することが出来れば、こうした動向の結果として、どのような事態が生じるかを議論することが可能である。
岡本・江川・田中*は、以上のようなことを共通認識として、国際経済におけるフラグメンテーションやアウトソーシングについて、これまでに発表されてきた理論的研究や実証的研究を分析・検討してきた。 その結果、一応以下のような結果を現在得ている。
江川は、伝統的なリカードの比較生産費モデルに中間生産物の取引を入れたモデルを上手く構築して、フラグメンテーションやアウトソーシングによって中間生産物(部品・半製品)の取引が可能になると、貿易に従事する2国は、完成品のみの貿易を行う場合に比較して、何倍も大きな利益を獲得することが可能である、と言う興味深い結果を示すのに成功している。すなわち、フラグメンテーション化は、潜在的には非常にプロダクティブな活動であって、国際分業に失敗しなければ双方の国が大きな貿易利益を獲得可能であることを示すことに成功している。
また岡本は、南北貿易(フラグメンテーション化による部品・半製品の取引は南北貿易以外の何者でもない)と所得分配に関する問題との関連でこの理論に関する研究を進め、フラグメンテーション化によって、自国(先進国)内での所得分配、特に熟練労働と未熟練労働の間の所得分配がどのように変化するかを、特殊要素モデルを応用したモデルを構築し分析をした。その結果幾つかの命題を得たが、特にフラグメンテーション化によって、一中間財価格が上昇(下落)した場合は、当該中間財の生産量を拡大(縮小)させ、他の財の生産量を減少(増大)させること、それと同時に、当該財に特殊的な要素の報酬率と未熟錬労働の報酬率を増大(減少)させ、他財の生産に特殊的な要素の報酬率を下落(上昇)させることを、示すことに現在成功している。
なお、本研究の成果は、論文として専門雑誌等で今後1年以内を目処に発表の予定である。
[*本研究の当初の予定では、神戸商科大学大学院経済学研究科の「国際経済学研究」参加者と岡本・江川および田中一芳教授でスタッフ・セミナーを月1回の予定で行う筈であったが、共同研究者の1人である流通科学大学の田中一芳教授の体調が思わしくなく、研究班起ち上げ後3ヶ月して同教授は逝去された。国際経済学の研究について、田中教授のコメントやご意見をもう頂く事ができなくなったことを大変残念に思うと同時に、ここに謹んで田中教授のご冥福をお祈りする次第である。なお、本研究は、岡本・江川による週1回のスタッフ・セミナーを兼ねた大学院の授業を通じて実施された。]
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