研究者 | 所属大学 | |
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代表者 | 山本 誠一 教授 | 神戸市立工業高等専門学校 |
桑田 優 教授 | 神戸国際大学 |
国内外における医療産業都市の成立過程の研究-神戸医療産業都市構造実現のために-
神戸市は現在医療産業都市構想を進めている。しかし神戸にはこれまで医療産業と特に深い関係があったというわけではない。一方、国内外を見ると、多くの成功した医療産業集積地がある。これらの医療産業都市はなぜその地方に発生し、どのように発展していったかはきわめて興味深い。また神戸医療産業都市を発展させるためには他の地域を分析し成功の理由を知ることは重要であると考えられる。そこで今回、国内外の医療産業に関係した地域の歴史を調べた。国内では、製薬会社が集積する大阪の道修町、製薬で有名な富山、それに医科学器機の製造販売業者が集積する東京の本郷、湯島地域を調査した。また外国においては米国ミネソタ州ロチェスターのメーヨークリニックとテキサス州ヒューストンのテキサスメディカルセンターを調査した。
本報告は第1章から第6章から構成される。第1章から第3章までは国内の医療産業都市の調査で、第4章と第5章は海外の医療産業都市に関するものである。第1章では“江戸時代における薬種の流通-薬業都市大坂道修町および越中富山について”というテーマで桑田が主に江戸時代における大阪道修町と富山の薬業都市の歴史を調査した。第2章では“くすりのまち:道修町の歴史、明治以降を中心に”というテーマで主に明治以降の道修町の歴史を山本が探った。第3章では“医療機器関連企業が集積する本郷、湯島周辺の歴史”というテーマで本郷、湯島周辺の医科学器機業者が集積する理由を山本が調べた。第4章では米国ミネソタ州ロチェスター、メイヨークリニックの歴史と現状を山本が調べた。第5章では米国テキサス州ヒューストン、テキサスメディカルセンターの歴史と現状を山本が調査した。第6章ではこれらの調査で明らかになった医療産業都市の発展に必要とされる要因をまとめた。内容の詳細に関しては本報告のもととなった非短縮版の報告を参照していただきたい。
国内外の医療に関連した複数の地域の歴史を調べた結果、医療産業都市が発展するためには地域独自の要因が多いが、共通の要因もあることが明らかになった。以下に医療産業都市が発展するための要因をまとめる。
医薬品関連企業の集積地域に関しては教育研究機関の存在は必須では無いように思われる。むしろ販売業者の集積が中心になって発展してきたようだ。その理由としては医薬品が従来、病院や大学で開発されたのでは無く、医薬品業者が製造や輸入しており、医学関係の教育研究機関はユーザーとしての存在であったためと考えられる。医薬品業者が集積する必要性があったのは集積することにより独占的な販売形態を維持することと医薬品に対する専門知識や最新情報を得ることができることが主たる理由であろう。これまでは医薬品に関する専門知識を得るために学校が設立され大学の薬学部や薬科大学になっていったが今後ゲノム創薬の時代になると、医薬品の開発にも研究機関の存在が不可欠になると考えられる。
医療機器(医科学器機)関連企業に関しては、まず納入先である病院に近いことが重要であろう。現在の本郷、湯島の小規模な医科学器機の販売業者の多くは当該地域の病院への納品が主たる業務であるように思われる。大学の医学部や医学系の大学が本郷、湯島周辺に多く集まった理由は歴史的に日本における近代医学の発祥の地であったことが大きい。さらに医科学器機の製造や販売が特殊な分野であることに加え、薬事法の規制を受けることが専門知識と最新情報を必要とさせ、一つの地域に集積することの利点を生み出してきたものと推測される。
メディカルセンターの定義は明確ではないが、大規模な医療関連施設が集まる地域と定義すれば、米国のメイヨークリニックやテキサスメディカルセンターがそれにあたる。メイヨークリニックもテキサスメディカルセンターともに病院が核になって発展していったが発展の過程で教育研究機関を追加あるいは誘致している。その理由は先端の医療技術を提供するためには医療従事者の教育が重要であり、また最新の医療技術を開発するためには研究機関が必要であるからと考えられる。教育研究活動は国際的であり日本からも多くの医者がこれらのメディカルセンターに留学している。しかしメディカルセンターは医療サービスの提供や医学教育研究が主で医療機器開発はほとんど行われていないかあるいは医療サービスのための補佐的なものである。
メディカルセンターの発展のためには、都市計画も重要で緑の多い環境や冬場積雪がある地域では地下道を整備したり2階で連絡する通路を作ったりしている。車社会である米国においては駐車場の数がきわめて多く、テキサスメディカルセンターには数万台分の駐車場が用意されている。日本においても広い駐車場はメディカルセンターの発展には不可欠なものになろう。
医薬品企業集積地域、医療機器製造販売集積地域、あるいはメディカルセンターそれぞれ歴史に特色があり興味深い。将来的には医薬品関連企業や医療機器関連企業もメディカルセンター内に存在することが有利になると考えられる。それぞれの協力が今後さらに必要とされるようになるからである。ある程度の集積が進めば最新情報を求めて新たな集積が起こることになる。さらに情報の価値を高めるためには研究機関や教育機関の活躍が必要であると考えられる。
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